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Channel: 100年経営対談 | メディアサイト「TCG Review」
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クラウドERPを通じて企業の成長と変革を支援:日本オラクル 渋谷 由貴×タナベコンサルティング 若松 孝彦

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世界ナンバーワンのクラウドERP「Oracle NetSuite(オラクル ネットスイート)」。国内で同事業を牽引する日本オラクルのバイスプレジデントNetSuite事業統括日本代表の渋谷由貴氏に、データドリブン経営とERP構築のポイント、デジタルを活用して成長する会社・組織づくりについて伺った。
※Enterprise Resource Planning:統合基幹業務システム

 

 

クラウドERPは組織デザインの変革ツール

 

若松 オラクルが展開する「NetSuite」はクラウドERPとして世界中で3万7000社超に利用されています。タナベコンサルティンググループ(以降、TCG)は中堅企業向けクラウドERPシステムとしてNetSuiteを高く評価し、私自身も社長として2018年から導入を決断。マネジメント改革に非常に有効なシステムであると実感しています。

 

渋谷代表は、2023年7月に日本オラクルのバイスプレシデントNetSuite事業統括日本代表カントリーマネージャーに就任されました。これまでの経歴をお教えください。

 

渋谷 私は新卒で日本の大手商社に入社後、営業としてキャリアをスタートしました。営業とは言っても業務は広く、新規事業の立ち上げやマーケティング、パートナーの立ち上げなどさまざまな経験をしました。その後、仕事と家庭の両立を考えて外資系のIT企業へ転職。そこで広い市場に対するマーケティングを担当していた時、オラクルが新しいマーケティングクラウドを日本で立ち上げると聞き、日本オラクルに転職しました。

 

若松 大手商社で新規事業を経験され、外資系企業、しかもデジタル分野のマーケティングを担当されたことは、今の代表としての仕事に結び付いていますね。日本オラクルに転職された決め手は何だったのでしょうか。

 

渋谷 外資系IT企業でのマーケティングに面白さを感じる一方、私自身はITに関するプログラム開発などの業務経験は少なく、「お客さまの悩みや課題感を当事者として理解しきれていないのではないか」と感じていました。「お客さまの気持ちが分かるようになりたい」という思いが募る中、マーケティングクラウドなら当事者として支援できると考えました。なぜなら、マーケティングクラウドはお客さまがマーケターであるからです。私自身もマーケティングの当事者でしたから、気持ちがよく分かります。また、事業の立ち上げも好きでした。

 

若松 新卒で入社された大手商社では、事業の立ち上げを経験されていますね。日本オラクルに転職後は、そのままキャリアを積まれたのでしょうか。

 

渋谷 一度、日本オラクルを離れ、ビジネスに関するデータ解析プラットフォームを開発する米国のスタートアップ企業に移りました。当時は、まだ日本にデータドリブン経営が浸透していない状況でした。転職後は、上場企業からスタートアップ企業まで、本当にさまざまな規模やステージの企業と仕事をしました。

 

個人のキャリアで言えば、複数部門の統括を経験できましたし、それこそ経理からお客さまのシステム修正まで、ありとあらゆる業務に関われて面白かったです。

 

若松 1人で何役もこなさなければならないのがスタートアップ企業なので、大企業とは違った経験を積まれたわけですね。

 

渋谷 その後、外資系IT企業に転職し、デジタルツールを使ってお客さまの裾野を広げるためのセールス体制を立ち上げるミッションに参画。2023年7月に日本オラクルに復帰し、国内のNetSuite事業を統括しています。

 

若松 NetSuiteのマーケティング戦略についてお聞かせください。

 

渋谷 NetSuite自体は開発されて25年、日本ではリリースから18年たっています。国内の中堅・中小企業のお客さまを中心に、さらに裾野を広げているところで、すでにニーズをお持ちのお客さまだけでなく、潜在的なニーズを先取りする攻めのセールスを展開していこうと考えています。現在、全世界で3万7000社以上のお客さまにご利用いただいており、日本でもNetSuiteの統合クラウドERPソリューションをより多くの企業にお届けしたいと考えています。

 

Fit to Standardの本質 システムにできる仕事はシステムに任せる

 

若松 TCGではNetSuiteの導入前に他社のシステムを使っていましたが、オンプレミス(サーバーやソフトウエアなどのシステムを自社に設置し保守・運用する形態)だったこともあり、効率の悪さを感じていました。そこに登場してきたのがクラウドERPでした。

 

経営で大事なことは、マーケティングやマネジメント系のファイナンス、物流などの機能がバリューチェーンとして連携しながら組織全体がレベルアップすることです。私は、コーポレート戦略本部のデジタル戦略部メンバーとともに、システム変革のコンセプトを「TCG One Platform戦略」と名付けてリーダーシップを取ってきました。その中で、NetSuiteの「ビジネスを最先端のベストプラクティスに合わせていく」という「Fit to Standard」の考え方が非常に良いと判断したのです。

 

渋谷 システムをカスタマイズするのは、業務に縛られているようにも見えます。ビジネスにおいて、過去のやり方が未来にも正であるケースはほとんどありませんから。企業は変わり続けることでしか生き残れないのです。

 

私自身、Fit to Standardの考え方はNetSuiteのコンセプトであり強みだと考えています。NetSuiteのソリューションである「Suite Success」は、3万7000社に上る導入企業のデータを分析して抽出したベストプラクティスや、それぞれの国、業種、ビジネスの規模などに合わせた特定の機能を数多くそろえており、各社にフィットする仕組みを提供できます。ただ、お客さまがそれに合わせて業務を変えるには、経営視点のアドバイスが伴っていないと難しいですね。

 

若松 その通りです。私は、経営者リーダーシップの素養の1つとして、「デジタルリーダーシップが大切である」と言ってきました。デジタルテクノロジーを使って組織を変革したり、生産性を高めたりするリーダーシップは経営そのものですからね。

 

業務そのものを改善するのではなく、業務は「Fit to Standard」の視点で取り組み、機械に任せられる部分は任せる。いわゆる自動化です。カスタマイズを強みとするシステムもありますが、業務がオリジナル化していくと組織は硬直化します。各社のオリジナリティーに合わせることがフィットすることだと思われがちですが、カスタマイズするほどに組織は硬直化するというのが私の考えです。その上で、人の創造性やクリエイティブな部分を生かさなければ組織の生産性は絶対に向上しません。経営視点で組織を変革する場合、「捨てる、改める、新しくする」のステップが必要ですからね。

 

渋谷 おっしゃる通りです。NetSuiteもシステムができる部分はシステムに任せ、人はクリエイティブな部分に集中できるようにデザインされています。その結果、組織の生産性は向上します。私たちは、自動化による効率性・生産性向上を実現し、お客さまのお役に立ち続けられることを光栄に思っています。

 

経営者がデータに基づいて判断できる環境をつくる

 

若松 日本生産性本部「労働生産性の国際比較」(2023年12月)によると、2022年の日本の1人当たり労働生産性は、OECD(経済協力開発機構)加盟38カ国中30位。ポルトガルやハンガリー、ラトビアといった東欧・バルト海沿岸諸国とほぼ同水準です。また、OECD加盟諸国の2022年の平均年収ランキングで、日本は26位。イタリア・スペイン・ポーランドと同水準であり、3位の米国の約半分です。

 

IMF(国際通貨基金)の2022年の世界GDP(国内総生産)ランキング3位の国とは思えないデータです。今後、日本の労働力人口が減少していく中、これらのトレンドを放置すれば日本企業全体が沈んでいく可能性が高まります。

 

そもそも、日本企業の多くは職務への対価が定義されていません。業務の境界線も曖昧ですが、ERP導入の際に業務をスタンダード化することで「ジョブデザイン」を変えることができます。組織の生産性を変革するチャンスになると私は思います。

 

渋谷 ツール導入の際にはKPI(重要業績評価指標)を設定しますが、何がやりたいかが決まっていないケースも少なくありません。ツールの導入は、そこを明確にするきっかけにもなります。

 

若松 DX戦略と経営のビジョンや戦略がひも付いていないからでしょうね。DX戦略を経営戦略や組織戦略の中心に置いて、ビジョンを軸にセグメントや業務を区分けしてKPIを設定するのが本来の姿ですが、TCGの調査によると、ビジョンとひも付いたDX戦略を推進している企業は、残念ながら15.4%に過ぎません(タナベコンサルティング「2023年度デジタル経営に関するアンケートREPORT」)。

 

また、基幹と直結しないCRM(顧客関係管理)ツールやマーケティングシステムはあり得ません。TCGでは、四半期ごとの業績予測を見ることができるように設計しています。例えば、NetSuiteに入力した売り上げの見込み情報は、セグメントごとに1年後の業績予測が出る形に加工されます。

 

TCGでは「先行マネジメント」と呼んでいますが、基準をつくってダッシュボード化することが大事です。マネジメントにデータを実装するスタイルであり、全社員がタイムリーに現状と予測の数値を確認できる、いわゆる「ガラス張り経営」のシステムをつくっています。

 

渋谷 若松社長がおっしゃるTCGの先行マネジメント型のダッシュボードは、どの中堅・中小企業でも必要な機能だと感じます。「経営の可視化」は生産性を上げる鍵になります。

 

若松 経営者の仕事は「決断」です。私はよく、「『決定』と『決断』は違う」と言います。「決定」は情報がそろった状態で決める行為。一方、「決断」は情報不足の中で決める行為。その解像度を上げるためにも経営の可視化が必要です。

 

決断には覚悟や勇気が必要ですが、KPIを含めた基準をつくっておくと解像度が上がります。もちろん、TCGでは財務会計もマーケティングもNetSuiteにつなげていますが、クラウド型であるからこそ実現できました。

 

渋谷 そこがNetSuiteの強みです。日本オラクルでは「真のクラウド」と言っていますが、開発当初からクラウドに特化しており、会計や営業系など全てのツールが同じプラットフォームに置かれるので、あらゆるデータを一元管理できます。これはつまり、お客さまがビジネスをよりコントロールすることで、俊敏性を保ちながら迅速に適応し、経営陣に情報をリアルタイムで提供できるようにすることを意味します。加えて、今後は、蓄積された多様なデータをAIが分析し、お客さまが必要とする仕組みを提案するサービスをスタート予定です。

 

若松 AIはこれからのDXに不可欠な機能です。AIに期待する部分はどこでしょうか。

 

渋谷 AIに仕事を任せ、生産性や効率性を高めようという流れがありますが、先日、米ラスベガスで開催された年次ユーザーカンファレンスでは、まさにAIに関する話題で持ちきりでした。NetSuiteはさらに自動化を進め、多くの知見とコントロールを提供し、お客さまの機敏性・コラボレーション・生産性の向上を支援していきます。そのために私たちが使っているテクノロジーの1つがAIで、25年前のクラウドと同じくらい革命的なテクノロジーです。

 

 

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